NGCやPCGSには、ペディグリーとしてアンティークコインの履歴が書いてある場合があります。
ペディグリーとは、日本語で「血統」を意味する言葉で、そのコインがかつて誰のコレクションとして存在したか、どのオークションで出品されたか、などに関する情報です。
そういった履歴は、アンティークコインの価値を上げる場合もあります。
今回は、アンティークコインの価値を上げるかもしれないコインの履歴について解説していきます。
- コインのコレクションやオークションの履歴は「ペディグリー」としてスラブケースに記載されている場合がある
- コインの履歴はコインの注目度や話題性を上げてコインの人気度をあげる可能性があり、信頼度をあげる可能性もある
- ペディグリーはスラブケースのグレードの1行から2行下に記載される
- NGCやPCGSに鑑定を依頼する場合にペディグリーの記載を依頼できる
- 有名コレクションやオークション名のほかに、注目度の高い経歴が記載されることもある
目次
コレクションやオークションの履歴とは?
アンティークコインにとってひとつの大切な情報となる、コレクションやオークションの履歴。
本来、アンティークコインの価値を決める大きな要素は主に「希少性」「グレード」「人気」の3つから成り立っています。
しかし、アンティークコインの履歴も、アンティークコインの価値に影響する場合があるのです。
★誰のコレクション品であったのか
★どういったオークションで売却されたコインなのか
この2点がアンティークコインの価値に影響するかもしれない理由と、スラブケースのどこを見れば履歴がわかるのか、を解説します。
なぜ履歴が価格に影響する?価値を上げるポイントとは
なぜ、「希少性」「グレード」「人気」以外の要素であるアンティークコインの履歴が価値に影響するのでしょうか。
履歴がコインに与える価値について解説します。
注目度・話題性
誰が持っていたアンティークコインか、どういったオークションに出品されたか、といった履歴は、アンティークコインの注目度や話題性をあげるひとつの要因となります。
アンティークコイン業界で有名な人物が所持していたという事実は、アンティークコインそのものにストーリーを与えます。
こういったストーリーは、コインを所持した人にとっての付加価値ともなり得るでしょう。
自分のコレクションを取り出して友人や他のコレクターに解説する時、興味を持ってもらう要素のひとつにもなります。
コインを見て、そのストーリーに思いをはせるのもきっと楽しいものとなるでしょう。
このように、アンティークコインの履歴は世間的な注目度や話題性をあげる可能性があります。
そして、世間的な注目度や話題性は、アンティークコインの価値をあげるひとつの要素「人気」をあげます。
そのため、履歴がコインの価格に影響をあたえることもあると言えるのです。
監修者 葉山満
必ずしもペディグリーがそのコインの価格を急上昇させることは無いようですが、
「あの有名コレクションだった過去のあるコインなのか!」と思うとより欲しくなったりしませんか?
信頼性
また、コインの履歴によって、コインの信頼性があがることも考えられます。
著名なコレクターの所蔵品であったり、有名なオークションで出品されたりするコインは、それだけで信頼度が増す可能性があります。
NGCやPCGSによる鑑定済みコインであれば信頼性が変化することはありません。
しかし、無名の個人宅から出てきたコインと著名コレクター所蔵のコインでは、やはり後者の方が信頼性が高いのではないでしょうか。
近年は技術の発達により贋作も作りやすくなっているため、誰かのコレクションとして存在したという証拠は、本物であることを証明する材料のひとつとなるのです。
しかし、名の売れた会社が、コインの出所偽装を測った事件が起こったこともあります。
ぜひこちらの記事をご参照ください。
Roma Numismatics社長逮捕!コインの出所を偽った?
どこを見れば履歴がわかる?
アンティークコインの履歴は、スラブケースのどこに記載されているのでしょうか。
コインの履歴は、ペディグリー(Pedigree)という、英語で「血統」を意味する言葉で称されるのが一般的です。
NGC鑑定済みコインの場合、このペディグリーは画像の丸で囲った部分のようにスラブケース表面のグレードの1行もしくは2行下部分に記載されている場合がほとんどです。
NGCのペディグリーに関するページ(https://www.ngccoin.com/coin-grading/pedigrees/)もぜひ参考にしてくださいね。
PCGS鑑定済みコインの場合も、下記の部分のようにスラブケース表面に記載されます。
画像出典:PCGS公式(https://www.pcgs.com/news/how-to-read-pcgs-labels)
スラブケースには、ネガティブな情報に関する「ネガティブコメント」も存在します。
NGC鑑定済みの古代コインにつくネガティブコメントとは?ネガティブコメント一覧を紹介!
ペディグリーを付けてもらうことは可能?
もしNGCやPCGSにペディグリーを記載して欲しい場合は、依頼できます。
しかし、いくつか条件があり、「The」ではじまる言葉は使用できないことや、帰属先に拒否された場合など、ペディグリーとして認められない場合もあります。
NGCやPCGSの裁量に基づいて記載されるので、100%希望通りになるわけではないことを念頭に置いておきましょう。
ペディグリーとして記載されるコレクションやオークション履歴を紹介!
それでは、どのようなコレクションやオークションの履歴がペディグリーとして記載されるのでしょうか。
一部をご紹介します。
有名コレクション
有名なコレクターによるコレクションには、ペディグリーとしてコレクション名が記載されます。
通常、コレクション名は「〇〇+Collection」と記載されますが、非常に有名なコレクションの場合は「Collection」を付けずに名前のみで記載されることも。
こちらでは、「Collection」を付けるまでもなく有名なコレクション名を中心に、どのような有名コレクションがあるか紹介します。
ノーウェブ(Norweb)
ノーウェブ家によるコレクションです。
若いころからコイン収集に魅了されていたエメリー・メイ・ホールデン・ノーウェブと、その夫ヘンリー・ノーウェブ・シニアの夫婦が持つコインが起点となっています。
しかし、エメリー・メイ・ホールデン・ノーウェブが、彼女の父親や祖父によるコレクションも受け継いでいるとされています。
夫妻の息子であるヘンリー・ノーウェブ・ジュニアも数々の希少コインを収集しました。
ギャレット(Garrett)
ギャレット家によるコレクションです。
1860年代より大学生でコイン収集をはじめたトーマス・ハリソン・ギャレットをはじめとした歴代ギャレット家によりコレクションされたコインを指します。
トーマス・ハリソン・ギャレットは、ボルチモア・アンド・オハイオ鉄道を経営する裕福な家庭の生まれで、コインの他にも版画や書籍などさまざまなものを収集していました。
エリアスバーグ(Eliasberg)
収集家のルイス・E・エリアスバーグ・シニアによるコレクションです。
1976年に亡くなるまでの30年間を通して収集されたコインの中には、非常に希少なイギリスコインがいくつか含まれていました。
ピットマン(Pittman)
ジョン・ジェイ・ピットマンによるコレクションです。
コイン収集家としては珍しく、裕福な家庭出身であったわけではないピットマン。
彼は、コダック社の従業員として働きながら、希少価値があるものの、市場価値があまり高くないコインに焦点を当てて収集していました。
10万ドル以下で収集したコレクションはのちに2.500万ドルで売却されるなど、先見の明のある収集家として有名です。
著名人
中には、歌手や映画俳優などの著名人が所蔵していたコインもあります。
エルヴィス・プレスリーが所有していたコインなど、著名人が所有していたコインはコインコレクターだけでなく、その著名人のファンからも注目されるでしょう。
監修者 葉山満
ほかにもさまざまな有名コレクションがありますが、言わずと知れたコレクションを4つ紹介してみました。
あと、私たちも良く知るハリウッドスターがコインコレクターだった!ということも意外とあるんですよ。
有名オークション
M&MやNACといったオークション名がペディグリーとして書かれている場合もあります。
しかし、100年以内に行われたオークションに関しては、開催者や会社の許可無しでつけることはできません。
その他経歴
ペディグリーの欄には、、歴史的背景に基づいた情報が書かれる場合もあります。
例えば、1857年にハリケーンにより沈没したS.S.セントラル・アメリカ号。
大西洋に沈んだこの船から搭載品を引き上げる作業は、2段階に分けて行われました。
30年以上も暗く冷たい海底に沈んでいた搭載品は非常に保存状態が良く、歴史的価値も高いことで知られています。
そのため、引きあげられたコインには、ペディグリーとして「S.S. Centrel America」と記されています。
このように、ペディグリーにはコレクション名やオークション名以外の経歴が書かれる場合が存在するのです。
まとめ
今回は、「ペディグリー」と呼ばれるコインの履歴について解説してきました。
有名コレクションであった履歴や、有名オークションに出品されていた履歴が記載されるペディグリー欄。
ペディグリーは、NGCやPCGSのグレードの1行から2行下に記載されるので、ぜひ購入予定のコインに書かれているかどうか見てみてください。
コインの鑑定依頼時に記載してほしいペディグリーも頼めるので、ぜひ覚えておいてくださいね。
- コインのコレクションやオークションの履歴は「ペディグリー」としてスラブケースに記載されている場合がある
- コインの履歴はコインの注目度や話題性を上げてコインの人気度をあげる可能性があり、信頼度をあげる可能性もある
- ペディグリーはスラブケースのグレードの1行から2行下に記載される
- NGCやPCGSに鑑定を依頼する場合にペディグリーの記載を依頼できる
- 有名コレクションやオークション名のほかに、注目度の高い経歴が記載されることもある