コイン鑑定機関のNGCが発表した新しいコインのグレーディング、NGCX。
従来のシェルドンスケールが1から70までの数字でコインのグレードを表すのに対し、NGCXは1から10の数字で表されるのが特徴です。
一体、NGCXはどのようなグレーディングなのでしょうか。
今回は、NGCが2022年11月に新たに発表した新しいコイングレーディング、NGCXについて、どのようなコインに適用されるのかなどの詳細をご紹介します。
また、実際にNGCXがどのようにグレーティングされるのかを徹底解説。
新グレーティングNGCXが気になる方はぜひ参考にしてくださいね。
- NGCXは新たなコレクター参入のためにNGCが作った1982年以降に発行されたコインを対象とした1~10の数値で表すグレーディング
- 2023年1月から指定の小売店で販売されるコインにNGCXが適用されるが、現時点では個人でNGCX鑑定の依頼はできない
- アンティークコインに関しては変わらず従来のシェルドンスケールが適用される
- NGCXは全部で29段階あり、それぞれの段階でシェルドンスケールのグレードに対応している
目次
NGCが新提案する新グレーディング「NGCX」とは?
2022年11月16日に、コインの第三者格付け鑑定機関であるNGCが新たに10までの数字で表すコイングレーディングを実施すると発表しました。
創立以来、NGCにおけるコインのグレーディングは70までの数字で評価する「シェルドンスケール」というものが採用されています。
そのため、NGCXが採用されるるというニュースは“新たなコイングレーディングの誕生”としてコインコレクターの間で非常に話題になりました。
そこでNGCが新提案した新グレーディング、NGCXについて気になる点を解説していきます。
- 従来からある70までの数字で表すシェルドンスケールはこれまで通り適用される
- NGCXが適用されるのは2023年1月から・指定の小売店で販売されるコインのみにNGCXが適用され、個人からのNGCX鑑定依頼は受け付けていない
- NGCXの対象となるコインは1982年以降に発行されたコインの他、ヴィンテージのモルガンダラーとピースダラー
- NGCXを10までの数字に設定した理由は他のコレクターズアイテムと足並みをそろえることにより新規コレクターが参入しやすくなるようにするため
従来の70段階あるグレーディングは使われなくなる?
新しいコイングレーディングが誕生しましたが、従来のシェルドンスケールと呼ばれる70までのグレーディングはこれまで通り適用されます。
NGCXの10までのグレーディングは、従来のグレーディングに対応するようにも作られていることがポイントです。
それぞれのグレーディングには質の違いや大きな変化などはなく、NGCに所属する専門家による信頼の置ける鑑定結果を表すものであることに変わりはありません。
いつからNGCXが適用される?どのように鑑定してもらう?
NGCXの適用は2023年1月から、とされています。
これまで通りNGCへアンティークコイン等を鑑定依頼する場合は、従来の70段階のシェルドンスケールが適用されます。
現在、NGCXでのグレーディングは小売店で販売されているコインにのみ行われており、販売店も限定されています。
そのため現時点では、一般のコレクターが手持ちのコインについてNGCXで鑑定してもらうことはできません。
NGCXのグレーディングを受けている小売店は下記の通りです。
- 360 Coin Group (Bradley Goldsmith)
- Asset Marketing, brands affiliated: ModernCoinMart, GovMint.com
- Collectors Alliance
- Frederick Coin Exchange
- Heritage Capital Corp
- Kevin Lipton Rare Coins
- Minshull Trading, brands affiliated: VaultBox and Finest Known
- Pinehurst Coins
- PWCC
- RARCOA
- United States Gold Bureau
NGCXの対象となるコインは?
世間に出回っている全てのコインがNGCX鑑定の対象となるわけではありません。
対象となるコインは、1982年以降から現在までに発行されたコインに限ります。
しかし、ヴィンテージのモルガンダラーとピースダラーに関してはNGCXの10までのグレーディングが適用されるコインに該当します。
モルガンダラーとピースダラーとは
モルガンダラーは、1878年から1904年までと、1921年に発行されていたアメリカの1ドル硬貨です。
イギリスの彫刻家であるジョージ・モルガンによりデザインされたためモルガンダラーと呼ばれています。
ピースダラーは、モルガンダラーの次に使用されていたアメリカの1ドル硬貨です。
1921年から1928年までと、1934年、1935年に発行されています。
アメリカとドイツ・オーストリア間で平和条約が結ばれたことを記念した硬貨であるため、ピース(平和)ダラーと呼ばれています。
モルガンダラーとピースダラーのいずれも、発行の100年後である2021年に記念コインとして復刻版が発行されました。
なぜ10段階?
従来の70までの数字ではなく、NGCXはなぜ最大10のグレーディングを採用したのでしょうか。
主な目的として、コレクター市場参入の間口を広げるためであることが考えられます。
NGCは、最大10までの形式でグレーディングすることについて、
“NGCX makes it easier than ever for collectors of comics, TCGs, sports cards and other collectibles graded on a 10-point scale to expand their interest to coins.”
と記載しています。
おおまかな意味としては、
「コミックやトレーディングカード、スポーツカードなどといったその他の収集品は10ポイントまでのグレーディングがされています。
NGCXでコインをグレーディングすることにより、これまで以上にコイン収集に興味を持つ人を増やせるようになるでしょう。」
ということを述べています。
監修者 葉山満
NGCと70段階のシェルドンスケールについて
ここでおさらいとして、新たなグレーディングであるNGCXを発表したNGCと、従来よりコインのグレーディングに採用されている70までの数字のシェルドンスケールについて解説します。
NGCとは
NGCは、アメリカのフロリダ州を拠点とするコインの第三者格付けサービスを行う機関です。
1987年に創立された非常に信頼性の高いコイン鑑定機関で、世界中からコイン鑑定の依頼を受けています。
大規模なコイン鑑定機関として、他にもPCGSという機関があります。
PCGSはNGCと並び信頼のおける鑑定機関として有名です。
PCGSは1986年に創立されており、NGCと同様最大数値が70のシェルドンスケールを採用しています。
NGCで鑑定を依頼したコインは鑑定結果やシリアルナンバーなどが記載されたスラブケースに入ります。
スラブケースに記載されているナンバーをNGCのホームページに入力すれば、そのコインに関する情報を閲覧できることはNGCに鑑定を出す一つのメリットと言えるでしょう。
しかし、NGCXについては、未だこの検索サービスは実施していません。
NGCX鑑定を受けたコインも、いずれホームページから情報を閲覧できるように準備しているそうです。
アンティークコインを鑑定するメリットと重要性を解説!【NGCとPCGS】
70段階のシェルドンスケールとは
NGCが創立以来採用している70までの数値でコインをグレーディングするシェルドンスケール。
シェルドンスケールは、米国でアンティークコイン市場が活発になったことにより1970年代に提唱されるようになりました。
心理学者であり貨幣学者でもあったウィリアム・ハーバート・シェルドン博士が1940年代に考案したものを改良したものを鑑定基準として採用しています。
そのため、シェルドンスケールと呼ばれているのです。
シェルドンスケールはコインのグレードにより1〜70の数値が付けられ、数値が高ければ高いほどコインの状態が良いことを表します。
グレーティングが1〜70であっても、実際は30の段階に分かれていることがシェルドンスケールの特徴です。
1/2/3/4/6/8/10/12/15/20/25/30/35/40/45/50/53/55/58/60/61/62/63/64/65/66/67/68/69/70、というように1ずつ数値が刻まれているわけではありません。
ちなみに、60から70のグレードのものを「Mint State(MS)」と呼びます。
監修者 葉山満
NGCXのグレーディング段階を詳しく解説!
それでは、NGCSのグレーディング段階について詳しく解説していきましょう。
NGCXはコインのグレードを1〜10の数値で評価するものですが、9.2や8.5といったグレードも存在するため、全部で29段階あります。
シェルドンスケール同様、数値が高ければ高い方が状態が良好なコインです。
評価 | コインの状態 | 相当する
シェルドンスケール |
10 | 5倍に拡大して見ても欠陥が無い | 70 |
9.9 | ほとんど欠陥が感知できないほど完全 | 69 |
9.8 | 非常に刻印がシャープでごくわずかな欠陥しかない | 68 |
9.7 | わずかな欠陥があるけどシャープな刻印 | 67 |
9.6 | 傷や線状の痕跡がほとんどなく非常に状態が良い | 66 |
9.5 | 最小限の接触跡や線状の痕跡があるが状態が良い | 65 |
9.4 | 適度な接触跡や線状の痕跡があるが状態が良い | 64 |
9.3 | 状態良く刻印されたものだがいくつかの明らかな接触跡や線状の痕跡、その他の小さな欠陥がある | 63 |
9.2 | 若干もしくは平均的な接触跡があり中程度の擦り傷とさまざなまサイズの線状の痕跡がある | 62 |
9.1 | わずか、もしく平均的な接触跡があり、摩耗の跡は無いが大きめの擦り傷がある | 61 |
9 | 平均的な傷があり、摩耗の跡は無いが多くの傷もしくは複数の大きな擦り傷がある | 60 |
8.8 | デザインの最も出っ張っている部分にわずかな摩耗が見られるが全ての詳細が確認できる | 58 |
8.5 | デザインの50%未満にわずかな摩耗が見られるが全ての詳細が確認できる | 55 |
8.3 | デザインの50%以上にわずかな摩耗が見られ、出っ張っている部分に非常にわずかに不明瞭な部分があるが詳細が確認できる | 53 |
8 | デザインの50%以上にわずかな摩耗が見られ、出っ張っている部分にわずかに不明瞭な部分がある以外は詳細が確認できる | 50 |
7.5 | 詳細が完全に確認できるが出っ張っている部分にいくつかのわずかな摩耗が見られる | 45 |
7 | 詳細が完全に確認できるが出っ張っている部分のほぼ全てにわずかな摩耗が見られる | 40 |
6.5 | 詳細が完全に確認できるが出っ張っている部分の全てが摩耗している | 35 |
6 | ほぼ完全に詳細が確認できるがデザイン部分に適度に不明瞭な部分がある | 30 |
5.5 | ほぼ完全に詳細が確認できるがデザイン部分にさらに不明瞭な部分がある | 25 |
5 | デザインは適度に詳細が確認できつつ文字や数字がシャープである | 20 |
4.5 | 凹んだ部分が不明瞭ながら文字や数字がシャープである | 15 |
4 | 凹んだ部分がより不明瞭ながら文字や数字がシャープである | 12 |
3.5 | デザイン全体に擦れがあり文字や数字に不明瞭さがある | 10 |
3 | デザイン全体に摩耗があり文字や数字がより不明瞭である | 8 |
2.5 | 文字や数字の周辺は十分で縁がシャープである | 6 |
2 | 文字や数字の周辺は完全で縁に摩耗が見られる | 4 |
1.5 | 文字や数字はほぼ読み取ることができるが縁が内側にむかって摩耗している | 2と3 |
1 | コインの日付や種類を確認するのに十分だが縁がほぼ平らになっている | 1 |
新グレーディングNGCXまとめ
今回は、2022年11月にNGCが発表した新しいコインのグレーティング、NGCXについて解説しました。
従来は70までの数字でコインのグレードを表すシェルドンスケールであることに対し、NGCXは10までの数字で表す新グレーティングです。
しかし、NGCXは9.8など小数点以下のグレードもあるため、全部で29もの段階があります。
一方、従来のシェルドンスケールは最高グレードが70というものの、用意されている段階は全部で30。
つまり、NGCXはシェルドンスケールと比べて大きな違いは無いといえます。
NGCXが作られた目的は、新たなコレクターの参入促進。
NGCは、コインをわかりやすく10までの数値でグレーディングすることにより、新たにコインに興味を持つ人が増えると考えています。
現段階ではアンティークコインの鑑定依頼は従来通りのシェルドンスケールで行われますが、今後NGCXがどのように活用されていくか、楽しみですね。
- NGCXは新たなコレクター参入のためにNGCが作った1982年以降に発行されたコインを対象とした10段階のグレーディング
- 新規コレクターの参入促進のため、他のコレクターズアイテムに足並みをそろえた10までの数値でコインをグレーティングすることを目的のひとつとしている
- 2023年1月から指定の小売店で販売されるコインにNGCXが適用されるが、現時点では個人でNGCX鑑定の依頼はできない
- アンティークコインに関しては変わらず従来のシェルドンスケールが適用される
- NGCXは全部で29段階あり、それぞれの段階でシェルドンスケールのグレードに対応している