このようにアンティークコインのグレードをどうやって見ればいいのかわからないという方や、グレードがなぜ重要なのかがよくわからないという方もいるかと思います。
この記事ではアンティークコインのグレードの役割や見方とグレードの重要性について解説していきます。
是非この記事を最後まで読んで、アンティークコインのグレードについての理解や知見を深めましょう。
- アンティークコインのグレードはコインの状態を表し、コインの価値を左右する
- アンティークコインのグレードが高いと料金は上がり、未使用だと最も価値が高くなる
- アンティークコインのグレードを決める2大鑑定機関がある
- アンティークコインには大きく分けて2つのグレード表記がある
目次
アンティークコインのグレードとは
アンティークコインのグレードはコインの専門家からコインのことについて知らない人まで、誰もがコインの品質がわかりやすいようにつけられた等級のことを指します。
多くの場合、コインを梱包するケースの外側に表示されているため、一目でそのコインのグレードを知ることができます。
アンティークコインのグレードの役割
鑑定されたアンティークコインにはグレードが割り振られていますが、このグレードは一体どんな役割を果たしているのでしょうか?
アンティークコインのグレードには主に以下の二つの役割があると言われています。
①アンティークコインの状態を反映する
アンティークコインのグレードはコインの状態を反映します。
この後詳しく説明しますが、アンティークコインにはアメリカ基準で1~70までのグレードが付けられます。
コインが未使用に近ければ近いほどグレードは70に近くなり、逆にコインの状態が悪ければ悪いほどグレードは1に近くなります。
このことから、アンティークコインのグレードはそのコインがどれほどの状態であるのかを反映する役割を果たしていると言えます。
②アンティークコインの価値を左右する
アンティークコインのグレードはアンティークコインの価値を左右します。
もちろん、グレードだけではなくコインがどれだけ数が少ないか等その他の要因によってもコインの価値は影響されますが、世界共通の基準でつけられたグレードはアンティークコインの価値に多大な影響を与えます。
以下で詳しく説明しますが、同じ種類のコインでもグレードが異なるだけで、コインの値段が大きく変わります。
それほど、アンティークコインのグレードというものはアンティークコインの価値を左右する大きな要因であると言えるのです。
アンティークコインのグレードと料金の関係
以下では、アンティークコインのグレード料金の関係について解説していきます。
- グレードが高いとコインの料金も上がる
- 未使用のコインは最も価値が高い
グレードが高いとコインの料金も上がる
アンティークコインの価値が上がる要因にはグレード以外にもコインの希少性やデザインなどがあります。
しかしながら、同じ種類のコインである場合にはコインのグレードが高ければ高いほどコインの料金も高くなります。
以下では同じ種類でグレードが異なるコインの実例をご紹介します。
ジョージ6世 聖ジョージ竜退治 5ソブリン金貨 PF63★
出展:コインパレス
- グレード:NGC PF63★
- 販売価格:210万円
このコインは1936年〜1952年の間にイギリスの国王に即位していたジョージ6世を、ドラゴンを退治したとの逸話が残る古代ローマの英雄ゲオルギウス(英語名はジョージ)になぞらえたデザインが施されたアンティークコインです。
このコインのグレードはアメリカの鑑定機関であるNGC(のちほど詳しく説明)の規格でPF63★がつけられており、その値段は210万円です。
ジョージ6世 聖ジョージ竜退治 5ソブリン金貨 PF66UCN
出展:コインパレス
- グレード:NGC PF66UCN
- 販売価格:990万円
こちらのコインは先ほどのコインと同じ種類の「ジョージ6世 聖ジョージ竜退治 5ソブリン金貨」ですが、グレードはPF66UCNで先ほどのコインより高く、なんと料金は990万円です。
アンティークコインは昔のものであればあるほど保存状態が悪くなるため、高いグレードのコインの数は少なくなります。
また、当時はコインを保存しておくためのケースも現在ほどのクオリティではなかっため、保存状態の良いコインの数は必然的に少なくなります。
そのため、コインのグレードが高くなればなるほど、料金も高くなっていき、同じ種類のコインでもここまで値段に差が出てしまうのです。
未使用のコインは最も価値が高い
当然のことかもしれませんが、未使用のコインは最も価値が高くなります。
ただ先ほども述べたように、昔のコインになればなるほど未使用状態のコインは残っていないため、そもそも未使用状態のコインが存在しないのが現状です。
最上級グレードのアンティークコインを紹介
以上でコインのグレードと料金の関係について解説しました。
ここでは、グレード・希少性ともに最上級グレードであるアンティークコインについて紹介します。
ウナ&ライオン 試作プルーフ金貨 トライアルピース
出展:コインパレス
「ウナ&ライオン 試作プルーフ金貨 トライアルピース」は1838年にヴィクトリア女王の即位1周年を記念して作られた「世界で最も美しいコイン」と呼ばれる「ウナ&ライオン」の復刻版として2019年に発行されたコインです。
コインが発行されてからまだ間もないため、コインのグレードは最上級のPF69UCとなっており、その販売価格はなんと3億円にもなります。
ヴィクトリア クラウン試作金貨
出展:コインパレス
「ヴィクトリア クラウン試作金貨」は1887年にヴィクトリア女王の即位50周年を記念して発行されたコインです。
コインの希少性やデザイン性もさることながら、100年以上前に作られたコインだということを感じさせない保存状態であるために最高級グレードのPF65+UCが与えられており、販売価格はなんと1億円です。
アンティークコインのグレードはどのように決まるのか
以上でアンティークコインの役割や料金との関係などについて解説していきました。
ここでは、アンティークコインのグレードがどのように決まるかについて解説していきたいと思います。
アンティークコインのグレードは主に以下の3つの方法によって決められます。
①コインの所有者がグレードをつける
アンティークコインのグレードの決め方1つ目は、「コインの所有者がグレードをつける」です。
これは、アンティークコインの保有者が自分のコインに「未使用」や「中古」などコインの状態を判断し、各自でグレードをつけるというものです。
こういったグレードの表記の仕方は、フリマアプリや個人のオークションサイトなどでコインをやり取りする際、コインに公的な鑑定がなされていない場合に用いられます。
あくまでこのグレード表記は、コインの保有者の主観に基づくものであり、不適切な表記がなされている場合がありため、購入の際は注意が必要です。
②専門家やコインショップがグレードをつける
アンティークコインのグレードの決め方2つ目は、「専門家やコインショップがグレードをつける」です。
アンティークコインの専門家やコインショップはアンティークコインに関する知識が豊富であるため、コインの保有者がグレードをつける場合よりもグレードの精度が高くなります。
しかしながら、このグレードの決め方もお店や専門家によって基準が多少異なり、中には正確なグレードでない場合もあります。
そのため、コインを購入する際は「販売元のコインショップに販売実績があるか」「鑑定機関公認のショップであるか」を確認するようにしましょう。
③鑑定機関がグレードをつける
アンティークコインのグレードの決め方3つ目は、「鑑定機関がグレードをつける」です。
アンティークコインの主な鑑定機関にはNGCとPCGSがあります。これらの機関は、これまで鑑定してきたアンティークコインに関する膨大な知識や鑑定技術を持っているため、鑑定の精度がより高くなります。
そのため、NGCやPCGSが付けたグレードはコインのグレードの世界的な基準となっており、NGC・PCGSの鑑定書があるとアンティークコインの価値は高く評価されます。
アンティークコインを購入する際は、この二つの機関によって鑑定がされているかを確認することで、偽物のコインや適正化価格ではないコインの購入を防ぐことができます。
NGCとPCGS二つの鑑定機関については以下で詳しく解説します。
アンティークコインの2大鑑定機関
以上でも紹介したように、アンティークコインを鑑定する代表的な鑑定機関にはNGCとPCGSの二つの鑑定機関があります。
いずれもコインを鑑定する第三者鑑定機関の業界標準とされる業者ですので、以下で詳しく解説します。
NGCについて
NGC(Numismatic Guaranty Corporation)はアメリカのフロリダ州を本拠地とする世界最大級の第三者鑑定機関で、1987年に設立されて以降5200万枚以上のコインを鑑定してきた実績があります。
また、国際規模のアンティークコインの展示会などにおいても鑑定の実績を残している機関です。
コインを保存するスラブケースの開発をおこなった企業でもあり、アンティークコイン業界では最も権威のある機関です。
PCGSについて
PCGS(Professional Coin Grading Service)はアメリカのカリフォルニア州を本拠地とするアンティークコインの第三者鑑定機関で、1986年に設立されました。
NGCとともにアンティークコインの2大鑑定機関とされ、アンティークコインの品質を担保するために世界標準のグレード基準を用いた最初の鑑定機関です。
アンティークコインのグレード表記
最初の方でも少し説明したように、アンティークコインにはそのグレードを表すためのグレード表があります。
このグレード表があることによって、専門家から素人まで一目でコインの状態を判断することができます。
イギリスとアメリカのグレード表記を以下にまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
イギリスのグレード表記
アンティークコインが最も活発に発行・取引されており、古くから流通用のコインや記念硬貨が作られてたイギリスでは以下のようなグレード表が用いられています。
表の左側にはイギリスでの表記を、右側にはそれに対応させた日本語表記を記載しています。
イギリス | 日本 |
---|---|
PF(Proof) | プルーフ |
PL(Proof-like) | プルーフライク |
FDC(Fleur de Coin) | 完全未使用品 |
UNC(Uncirculated) | 未使用品 |
AU(Almost Uncirculated) | 準未使用品 |
EF(Extremely Fine) | 極美品 |
VF(Very Fine) | 美品 |
F(Fine) | 並品 |
VG(Very Good) | 劣品 |
アンティークコインのグレードを表記する際には以上のグレードに加えて、コインの状態をより詳しく表すために「+」や「−」の表記が用いられます。
NGC・PCGSのグレード表記
NGCとPCGSでは、イギリスのグレード表よりさらに詳しい70段階のグレード表を用いてコインの状態を表しています。
名称 | グレード | 説明 |
PF(Proof) | 60–70 | プルーフ加工のコイン |
MS(Mint State,Uncirculated) | 60–70 | 未使用の状態 |
AU(About Uncirculated) | 50–58 | ほとんど未使用に近い |
XF(Extremely Fine) | 40–45 | 使用感があるが極めて美しい状態 |
VF(Very Fine) | 20–35 | 図柄は鮮明、使用感が強い |
F (Fine) | 12–15 | 図柄が薄くなっているが数字や文字は鮮明 |
VG(Very Good) | 8–10 | 全体的にダメージを受けていて文字や数字も薄い |
G (Good) | 4–6 | 文字・数字は明確に読める状態 |
AG(About Good) | 3 | 文字・数字がかろうじて読める状態 |
FR(Fair) | 2 | 部分的に形状が明確に残っている |
PR(Poor) | 1 | かろうじてコインの判別ができる状態 |
以上の70段階のグレード表に加えて、コインの状態をより詳細に表すために以下の表記が用いられます。
表記 | 説明 |
---|---|
RD(Red) | 元の色を95%以上保っている銅貨 |
RB(Red-Brown) | 元の色を5~95%以上保っている銅貨 |
BN(Brown) | 元の色を5%未満しか保っていない銅貨 |
CAM(Cameo) | 表面・裏面ともに艶消し加工がなされ、デザイン部分とデザインがない部分にコントラストがあるもの |
DCAM(Deep Cameo) | 表面・裏面ともに強い艶消し加工がなされ、デザイン部分とデザインがない部分にコントラストが強いもの |
上記以外にも、コインの詳細を表す表記がいくつかあります。
もっと詳しく知りたいという方は以下のPCGSの公式サイトを参考にしてみてください。
PSGC公式サイト:https://www.pcgs.com/grades
古代コインのグレード表記
古代コインとは、紀元前後のコインのことを指します。古代コインのグレード表記は通常の鑑定表記に加えて、Choice (Ch)がの表記が追加されます。
- AU・・・AU50~53
- Ch AU ・・・AU55~58
- MS ・・・MS60~62
- Ch MS ・・・MS63~64
- Gem MS ・・・MS65~70
この他にも、Strike(打刻)やSurface(表面状態)などの項目があり、ここについては5段階評価で表されます。しかしながら、古代コインでGem MS級のものは極めて少なく、滅多にお目にかかることはできません。
そのため、MSやCh AUといったグレードでも、かなりコインの状態が良いと考えられます。
代表的な古代コインをご紹介
「古代ギリシャ BC336-323 アレキサンダー大王 テトラドラクマ銀貨」
表:アレキサンダー大王の右向き頭像。
裏:玉座に座る最高神ゼウス左向き座像。神託を届けるワシ。
- Ch AU:(準未使用)
- Strike(打刻):5/5(満点)
- Surface(表面状態):5/5 (満点)
NGC鑑定Choice AU 5/5, 5/5の満点評価で申し分無しですね。
非常に高いグレードになります。
2300年以上前のコインとは思えない美しい輝きを保っている・・・
歴史的な芸術遺産とも言えるコインになります。
その他にも、古代コインのグレード表記には★やFine style(ファインスタイル)という表記が加わることもあります。
★は+評価を表し、これがついていると”より良い”という事です。
ファインスタイルは、「芸術性に富み打刻がコインの中央にうまく収まっている場合」に付きます。
古代コインはラベル上のグレードが同じでも、個々の打刻の状態、形状、重さなど、異なることが多いです。
オークションなどでも「XF→極美品」と「AU→準未使用」が同時に出品されている場合、「XF」が「AU」よりも高く取引されるようなこともよくあります。
古代コインの場合だとグレードよりも、スタイルや、希少性が重視される事が多いのでそういった取引がされるんですね。
【アンティークコインのグレードの見方とは?グレードの重要性についても解説!】まとめ
以上でアンティークコインのグレードの役割や見方とグレードの重要性について解説していきました。
アンティークコインのグレードはアンティークコインを知る上では欠かせないものであるとお分かりいただけたと思います。
みなさんもアンティークコインを購入する際はこの記事を参考にしてみてください。
- アンティークコインのグレードはコインの状態を表し、コインの価値を左右する
- アンティークコインのグレードが高いと料金は上がり、未使用だと最も価値が高くなる
- アンティークコインのグレードを決める2大鑑定機関がある
- アンティークコインには大きく分けて2つのグレード表記がある